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こんにちは、大阪駅前の税理士法人トップ財務プロジェクトの岩佐孝彦です。

今日の一冊はこちら。

 

 

年収は「住むところ」で決まる─ イノベーションの都市経済学』

エンリコ・モレッティ(プレジデント社)

 

 

それでは本日の赤ペンチェックを見てみましょう。

 

 

▼給料は技能より「どこに住んでいるか」で決まる

私の研究によれば、都市にハイテク関連の雇用が一つ創出されると、最終的に

その都市の非ハイテク部門で五つの雇用が生まれる。

雇用の乗数効果はほとんどの産業で見られるが、それが最も際立っているのが

イノベーション産業だ。

その効果は製造業の三倍にも達する。

 

 

▼経済を達成する要素は互いに深く結びついているので、人的資本(技能や

知識)に恵まれている働き手にとって好ましい材料は、同じ土地の人的資本

に恵まれない人たちにも好ましい影響を及ぼす場合が多い。

海の水位が上がれば、海に浮かんでいるボートすべてが上に押し上げられる

のに似ている。

 

 

▼結局、人間にしかできない仕事が残る

新しいテクノロジーが登場すると、多くの場合、高い技能の持ち主が有利に

なる一方、中程度の技能をもつ人に適した職の多くが消滅し、技能レベルの

低い人たちの雇用にはそもそもあまり影響が及ばない。

 

 

▼たとえば、かつて銀行の窓口係がおこなっていた業務の多くは、ATM

(現金自動預け払い機)やオンラインバンキングにとって代わられた。

しかし、機械的反復作業ではない仕事─ 頭脳労働中心の仕事もあれば、

肉体労働中心の仕事もある─ 場合は、だいぶ事情が違う。

大工、トラック運転手、ハウスクリーニングの清掃員、警備員など、

繰り返しの要素が少ない肉体労働の職は、コンピュータの影響をあまり

受けていない。

 

 

▼先進国の製造業は復活しない

最近、製造業雇用の減少にようやく歯止めがかかるのではないかと期待

をもたせるような兆候がいくつか見えてきた。

豊になれば当然のことだが、中国の賃金水準がじわじわ上昇しはじめている。

そのうえ、中国当局が通貨の人民元を切り上げたことで、アメリカ企業に

とって中国の労働コストはいっそう高まっている。

 

 

▼しかし、このような事例はニュースのネタとしては魅力的だが、広く

見られる現象とは言い難い。

大きな潮流に反する例外的な存在だからこそ、注目を集めるのだ。

 

▼現実には、製造業の衰退を招いた諸要因を押しとどめることは不可能に

近い。

11世紀はじめにイングランドの王位に即いていたクヌート王は、海に後退

を命じたが、海に言うことを聞かせることはできず、溺れかけたと言い伝え

られている。

 

 

▼アメリカ人は住む町をよく変える国民だ。

経済環境の好ましい土地があれば、すぐにそこへ移り住もうとする傾向がある。

しかし、誰もが移住に積極的なわけではない。

以下で述べるように、移住に対する積極性の違いがアメリカ社会の格差と

大きく関係している。

 

 

▼人々が移住に積極的なことは、アメリカに繁栄をもたらした大きな要因だ。

 

 

▼アメリカ人は昔から、ほかのどの先進国の国民よりも活発に、経済的な

チャンスを求めて移住してきた。

フェリーが過去の国税調査の詳細なベースを調べたところ、19世紀の

アメリカ人は、同時期の日本人の二倍も活発に移住していた。

今日でもアメリカの半分の世帯は、五年に一度の頻度で引っ越ししている。

しかもアメリカでは、同じ都市の中に引っ越すだけでなく、ほかの都市に

移り住む人も多い。

 

 

▼マイナス面としては、移住には社会的コストと私的コストがついて回る。

親やきょうだいと遠く離れて住めば、育児を手伝ってもらうことが難しい。

地域コミュニティとの結びつきも弱く、近所の人たちのこともよく知らない。

しかし、移住に積極的なことは好ましい側面もある。

いま住んでいる土地の経済状況が悪化すれば、ほかの土地に目を向けることが

できる。

 

 

▼学歴の低い層ほど地元にとどまる

教育レベルの高い人ほど移住する確率が高いのだ。

最も活発に移住するのは大学卒業者で、そのあとにコミュニティカレッジ

(二年制大学)卒業者、高校卒業者、高校中退と続く。

 

 

▼アメリカ全体で見ると、大卒者の近くは30歳までに生まれた州を出る。

この割合は、高卒者は27%、高校中退者は17%でしかない。

大卒者の移住率が高いのは、大学進学の際に州外の大学を選ぶケースが多い

からという面もあるが、それより大きな要因は、就労機会を求めて移住する

傾向が強いことだ。

 

 

▼この調査結果からうかがえるのは、専門職の労働市場が全国規模で形成され

ているのと異なり、肉体労働や非専門職の労働市場が概して地域単位で完結し

ているということだ。

そういう事情があるので、肉体労働や非専門職に就こうとする人たちは、ほか

の都市に好ましい就労機会があってもそれに目を向けない。

これは、豊かな国ではほぼどこでも見られる現象だ。

イギリスでも、移住に積極的な高学歴層の失業率には地域による違いがほとん

どないが、教育レベルの低い層の失業率には地域によって大きな開きがある。

 

 

▼教育レベルの低い人は、どうしてあまり移住しないのか?

他の土地に仕事があるという情報を十分に得られなかったり、人生の大転換

を成し遂げるのに必要な技能を持っていなかったりする場合もあれば、移住

のための資金が足りない場合もあるだろう。

移住は投資に似た面がある。

いい職に就くためには、事前に出費をしなければならない。

引っ越し費用もかかるし、新しい職が見つかるまで食いつなぐ生活費も必要だ。

ところが、教育レベルが低く、職に就けていないいない人たちは、その金がない。

 

 

▼格差と不動産価値の知られざる関係

ある都市の労働市場が好転すれば、たいてい賃金水準が上がり、住宅コスト

も高くなる。

住民にとっては、給料が増えても、住宅コストが高くなると給料上昇分の一部

が相殺されてしまう。

ジョンズタウンのような都市は、名目賃金こそ低いが、住宅コストも安いので、

見かけよりも実質的な購買力は大きい。

一方、ニューヨーク、ワシントンDC、ボストンの住民は、名目費こそ高いが、

給料のかなりの額が住宅コストに消えてしうので、給料の実質的な額は見かけ

ほど高くない。

 

 

▼しかし、住宅コストに関しては論じるべき点がまだある。

大気汚染のケースと同じく、労働市場の好調さが個々の世帯にどのような影響を

及ぼすかは、その世帯が持ち家か賃貸住宅かによって変わってくる。

 

 

▼都市の住宅コストは、格差問題を考える際にも考慮すべき要素だ。

格差論議では所得格差の大きさばかりが注目されがちだが、本当に重要なのは、

人々がどれだけのものを購入できるのかという点だ。

こうした観点でデータを調べると、高所得層と低所得層が購入しているものの

違いは、所得の違いほど大きくないことがわかる。

これは、食料品や衣料品に始まり、家電製品や医療にも言えることだ。

一見すると、理屈に合わないように思えるかもしれない。

どうして消費の格差は所得の格差より小さいのか?

その主たる要因は、住む場所の違いにある。

私が最近行った研究によれば、1980年以降、大卒者が住宅に費やす金額は、

高卒者に比べて急速に増加している。

これは、大卒者のほうが広い家やよい家に住んでいるからでもあるが、大卒者

と高卒者の居住地の分離傾向が強まっていることのほうが大きな理由だ。

 

 

▼地域活性化の成功の条件

「地域の実情に即した政策」が攻を奏して、経済的に苦しんでいる地域の雇用を

増やし、賃金水準を高めることに成功した例に、「エンパワーメントゾーン・プ

ログラム」がある。

クリントン政権の一期目の1993年、アトランタ、ボルチモア、シカゴ、デトロイト、

ニューヨーク、フィラデルフィア、ロサンゼルス、クリーブランドの困窮している

地区向けに、雇用を創出した企業に対する税制優遇措置と地区再開発のための

ファンドが創設された。

このプログラムの特徴は、都市全体を対象にするのではなく、その中の特定の貧困

地区に対象を絞り込んだ点にある。

 

 

▼エンパワーメントゾーン・プログラムは、企業や個人にそういう行動をとる

インセンティブを与えることに成功した。

政治的には、都市の貧困層のために資金を投入する政策という位置づけしかされて

いなかったが、この政策が実を結んだ理由の一つは、以上のような集団行動問題

を解決したことにあった。

 

 

今日も社長業を楽しみましょう。

 

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